賃貸併用住宅は、戸建て住宅に賃貸用の部屋を併設している住宅のことです。
この記事では、賃貸併用住宅が不動産投資に向いているのか、どんな購入リスクがあるのかについて解説していきます。
これから不動産投資をしようと考えている人は「こんな物件もあるのか」という参考にしてみてください。
中古物件の選び方、ローンや減税の注意点などについても触れていきます。
賃貸併用住宅とは?
賃貸併用住宅とは、マイホーム部分と賃貸部分とが併設されている住宅のことを賃貸併用住宅と呼びます。
住宅の一部を賃貸物件として貸し出すため、家賃収入を得られるのが魅力です。
賃貸併用住宅は不動産投資には最適なの? 向いてないの?
自らも住みながら家賃収入が得られる賃貸併用住宅。不動産投資には最適なのでしょうか。
ずばり、賃貸併用住宅は不動産投資としては向きません。
賃貸併用住宅は、住宅の一部分を他人に貸し出すため、一般のマイホームとは違います。
入居者と騒音やゴミ出しなどでトラブルになることも多いです。そのため、売り出したとしても買い手がつかず、不動産投資には向きません。
ただし、以下の点ではメリットがあります。
これからマイホームを建てたい、子や孫に資産を残したいという場合は、参考にしてみてください。
マイホームと賃貸物件を同時に手に入れたい
賃貸併用住宅は同じ建物内にマイホーム部分と賃貸部分を併せ持った住宅です。
別々にマイホームと賃貸物件を建設するのは大変ですが、賃貸併用住宅なら同時に両方を手に入れられることになります。
家賃収入で住宅ローンを返済したい
賃貸部分を貸し出すことで、家賃収入が得られるようになります。
建設費を家賃収入から支払えるため、後々のローン返済のハードルが低くなります。
また、賃貸併用住宅は、住宅ローンの融資が受けられるのも魅力です。
一般的に不動産投資目的でアパートを建てる場合、住宅ローンを借りることはできません。
自分が住む家ではないため、当然です。
しかし、賃貸併用住宅は建物全体の50%以上が居住スペースであれば、賃貸併用住宅の建築費として住宅ローンを利用できます。
住宅ローンは借入期間が長く、低金利なローンです。
同じ融資でも、住宅ローンを利用できたほうがお得と言えます。
賃貸併用住宅は節税の面でも魅力的です。住宅ローンの控除が受けられ、賃貸部分は減価償却も適用されます。
賃貸併用住宅は建設時、それから建てた後の税金の面でメリットを感じられるでしょう。
老後の家賃収入を見込んで
入居する人さえいれば家賃収入が得られます。
ローン返済のこと、老後の収入のことなど、将来的に家賃収入が欲しい人にはメリットです。
将来は二世帯住宅にしたい
現在賃貸として貸し出している部分に、子の家族を入居させ、二世帯住宅にもできます。
賃貸併用住宅はマイホーム部分と玄関は別ですので、二世帯にはうってつけの間取りです。
相続税の対策として
賃貸併用部件の場合は一部を他人に貸し出すことができるため、自宅でありながら借家物件として取り扱います。
完全なマイホーム住宅であればまるごと所有者のものですが、借家は入居者との兼ね合いもあり、すべてが自由にできないことから、このような特殊な取り扱いをされます。
借家物件を相続すると、マイホームの相続に比べて相続税は減額されるため、単なる住宅を相続させるよりは相続制対策になります。
安定的に収入を得るための注意点
賃貸併用住宅は、賃貸部分に入居者がいてこそメリットがあります。そのため、空室を作らない工夫が必要です。
住宅街にある
賃貸併用住宅で安定的に収入を得るなら、住宅街に物件を建てることが大切です。
暮らしやすい住宅地なら、退去してもすぐに次の入居者が見つかる可能性があるからです。
商業施設があるなど、生活の利便性が高い
生活しやすい場所なら、入居者は見つけやすいです。
コンビニ、病院、商業施設などが近くにあれば、生活の利便性は高く、安定的に家賃収入を得られます。
交通の便がいい
駅から徒歩10分以内、幹線道路に近いなど、交通の便の良さは必須です。
賃貸物件用の駐車スペースが十分にある
車がなければ暮らせない地域では、駐車場は必須です。
ファミリー用の賃貸物件なら、車2台分を用意する必要もあるかもしれません。
生活しやすい物件であればあるほど、入居者を見つけやすくなります。
双方の出入り口が離れた場所かつ道路に面している
賃貸併用住宅は、玄関だけでなく出入り口の門なども別々にあるといいでしょう。
双方の出入り口が離れており、かつ、道路に面していると便利です。
入居者は、なるべく大家と顔を合わせないことを望みます。門や入り口が別々であれば、安心して入居できるでしょう。
賃貸併用住宅の購入前に理解しておきたいこと
魅力ある賃貸併用住宅ですが、購入前に理解しておきたいことがあります。
売る場合は損になる可能性が高い
何度も指摘していますが、賃貸併用住宅は不動産投資には向いていません。
戸建てやアパート・マンションに比べると、賃貸併用住宅は売りにくいため売価も安くなるからです。
転勤など、引っ越しが必要になると住めなくなる
もし、転勤や引っ越しが必要になった場合、賃貸併用住宅には住めなくなります。
また、住宅ローンを借りて賃貸併用住宅を建設した場合、引っ越すと契約違反になり、一括返済を求められる可能性もゼロではありません。
将来引っ越しの可能性があるなら、賃貸併用住宅は避けたほうが無難です。
入居者に気を使うことになる
賃貸併用住宅の場合、同じ建物に暮らすため入居者に気を使わねばなりません。
入居者がいてこその家賃収入だと思うと、入居者を無下にはできないでしょう。
マイホームなのに集合住宅のように気を使わなければならないのは、窮屈さを伴います。
住宅ローンの借入額が高くなりがち
賃貸併用住宅の場合、1つの建物でありながら設備は2つ分備えなければいけません。
風呂やキッチン、トイレなどの水回りはコストがかさみやすく、一般的な住宅を建てると思うと費用はかさみます。
総合的に住宅ローンの借入額も高くなるため、ローン返済額のシミュレーションは入念に行うようにしてください。
入居者がいなければ収入はゼロ
賃貸併用住宅の魅力は、家賃収入が得られることです。
場合によってはその家賃収入でローン返済ができ、経済的負担を減らせます。
しかし、入居者がいなければ収入はゼロです。ローンの返済計画は綿密に立てるようにしてください。
賃貸併用住宅の中古物件の購入はお得?
ここまで賃貸併用住宅を新築するケースを前提に話を勧めてきました。
ここで気になるのが、賃貸併用住宅の中古物件です。
中古の賃貸併用住宅は建設費が不要な分、初期費用をかけずに購入することができます。
すでに入居者がいる物件なら家賃収入は保証されているようなものです。
賃貸併用住宅の建設を考えているなら、中古物件の購入を検討してもいいかもしれません。
中古物件購入のリスク
中古の賃貸併用住宅を購入するのにも、リスクやデメリットはあります。
節税面ではコストがむしろかかる可能性も
住宅ローンを利用して購入する場合、築年数に注意してください。
住宅ローン減税を受けるには、木造の場合は築年数20年以下、コンクリート造であれば築年数25年以下でなければなりません。
それ以上の場合は、住宅ローン減税を受けられず、節税面のメリットは受けられません。
また、住宅ローン減税を受けるためには、耐震基準適合証明書を税務署に提出する必要があります。
耐震基準適合証明書は、書類発行だけでも3万〜5万円の手数料が必要です。
さらに、この証明書を発行するためには耐震診断を受けなければならず、10万〜15万円ほどの費用がかかります。
もし、診断によって基準を満たさないことがあれば、耐震工事の必要もあり、さらなるコストがかかる可能性もあります。
収益のあがる物件は簡単には売りに出ない
そもそも中古の賃貸併用住宅は売りに出ることがありません。
売り主が引っ越す、入院する、経済的な問題を抱えている等、売りに出る理由は限られていると言ってもいいでしょう。
収益が上がっている物件なら、ほとんどの場合は手放しません。
もし、賃貸併用住宅の中古物件を不動産屋さんに勧められたら「なぜ、売りに出ているのか」を尋ねてみてください。
納得する返答がない場合は、その物件には手を付けないほうが無難でしょう。
入居者トラブルの可能性
入居者とのトラブルが絶えず、中古物件として売却するのかもしれません。
どんなにお得に感じられても、トラブルには見舞われたくないものです。
入居者とのトラブルがないのか、中古物件を販売する業者に尋ねてみる必要があるでしょう。
賃貸併用住宅は、リスクを理解して購入を
賃貸併用住宅は、マイホームと賃貸物件とを同時に手に入れられるという点で魅力的です。
家賃収入でローンを返済でき、節税もできるため、経済的にも心強いでしょう。
しかし、メリットが感じられるのも入居者がいる場合のみです。
入居者がいなければ多大な住宅ローンを負うことになり、メリットは得られません。
中古物件についても、売りに出されている理由を突き止め、家賃収入が十分に得られる物件を選ぶ必要があります。
賃貸併用住宅はリスクを理解し、十分に検討して購入するようにしましょう。