できれば手放したくない思い出の住居や、遺産相続した田舎の空き家を処分するなら、気心知れた親族へ売り渡すのも一つの手です。この記事では、不動産売買を親族間で行う場合のメリットと注意点について解説します。
親族間での不動産取引は、知らないと大きな損をしたり、違法行為に及んでいたりすることもあり注意が必要です。
親族に不動産を売るメリットとは?
まずは、親族間で不動産を売るメリットについてまとめます。
思い入れのある家でも売りやすい
住み慣れた家を誰か他の人に売るのは、心理的に抵抗を感じる人も少なくないはずです。
しかし、親族間で売買してしまえば、住み慣れた空間にまた足を踏み入れられる可能性が出てきます。一生サヨナラだと思って売却するよりも、見知った誰かが住んでくれれば心も穏やかでいられるでしょう。
買い主を探すコストが手間やコストがかからない
不動産を売りたいと思っても、買い手がつかないことは少なくありません。親族が不動産を買ってくれれば、買い手を探すためのコストはかかりません。手間も暇もかからず売ることができます。
共有持分を売買しやすい
1つのものを複数の人が共同で所有しているとき、それぞれの人が持っている持ち分を共有持分と言います。
例えば、遺産相続時に3兄弟で実家を共同所有しているケースをイメージしてみましょう。
共有持分は、自分の所有分であれば他社に売却することができますが、法律では、他の2人の兄弟に「自分の共有持分を他の人に売却する」旨を事前に伝え、許可を得る必要はないとしています。
内輪で所有していたものを他人と共有しなければならなくなっても、他の2人の兄弟は文句も言えません。共有持分にはこのような特性があります。
とはいえ実際は、共有持分を他人に売却するのは気が進まない人が多いですし、売ったとしても相場からは大幅に安い価格で売らなければならず、売るメリットはありません。
もし売却先が親族であれば、まったくの他人ではないため売りやすくなります。
住み続けられる可能性がある
不動産の売却先が親族なら、たとえ売ってもそのまま売り続けることができるかもしれません。例えば、親子で同居している家を子に売るケースもあります。この場合はお互い住んでいる家を売買取引しただけで転居を伴わないため、そのまま住み続けることができます。
一般的には他者に売れば住み続けるのは難しいケースが多いですが、親族間売買はこの限りではありません。
借金やローンの返済ができる
売り主に借金やローンの残債がある場合、家を売ることで返済ができます。これは親子間売買でも同じです。
【注意点】住宅ローンは借りられないことがある
親族間の売買において、住宅ローンは降りないことが多いです。これは、融資した金額が住宅購入にあてられるか不明瞭なためで、親族間の不動産売買は、贈与である可能性が高いからです。
親族間で示し合わせることで不正を見抜きにくいという側面もあるため、金融機関はできるだけ融資したがりません。
【注意点】贈与扱いになる? 不動産売却価格に注意!
親族間で相場よりも安い値段で取引きされることがあれば、それは贈与とみなされます。これをみなし贈与といいます。
見知った仲なら安く売り買いしたいと思うかもしれませんが、市場価格よりも大幅に安い価格で売買すると贈与とみなされ、市場価格との差額が贈与税の対象となります。
もし、4,000万円の市場価格の住宅があったとして、1,000万円で売買すると、3,000万円は贈与分として贈与税が課されるのです。
みなし贈与と捉えられないためには、不動産業者等による査定が重要になります。安易に売買する価格を決めてしまうと、のちのち面倒なことになるので注意しましょう。
【注意点】住宅ローンは借りられない可能性大
親族感動しで不動産を取引する際、基本的には住宅ローンの融資は受けられません。これは不正な融資を回避するためです。買い取る側の親族が住宅ローンを念頭に置いている場合、その取引きが成立しないこともあります。
【注意点】直系血族は特別控除が受けられない?
不動産売却をすると譲渡所得税という税金が課せられます。しかし、一般的には3,000万円の特別控除が適用され、所得税は数百万円安くなります。高額になりがちな不動産取引では、必ず活用してもらいたい税控除です。
ただし、直系の家族の間ではこの特別控除が受けられません。
具体的には、不動産を所有する個人の配偶者と直系血族です。自分からみて、父母や祖母、子や孫までもが直系血族に入ります。
また、不動産を所有する個人の親族で、「生計を一にする」場合や同居している場合は、特別控除がは受けられません。親戚の子どもの学費を支援した、おじやおばの入院費を支払った等の事実があれば、それは「生計を一にする」としてNGとなります。
また、ここでの親族は甥姪やはとこなど、かなり遠いように思われる親族も範囲として含まれます。
他にも、事実婚や内縁関係にある場合もNGになります。他にも細かい規定があり、誤れば追徴課税が請求されます。かなり厳しい基準があると心得て、売却の際は事前に確認するようにしましょう。
【注意点】親族こそ売買契約書を作成が必須
親族間で不動産取引きをすることになったら、親しい仲でも売買契約書を作るようにしてください。また、他の親族にもきちんと話し、揉めないかたちでの取引きをおすすめします。
売買契約書はネット上でもたくさんのテンプレートを見つけることができます。参考にし、契約書を作成してから売買契約を結びましょう。
親族間取引きの流れ
ここからは、大まかな親族間における不動産取引の流れを紹介します。
登記簿謄本の準備
法務局へ行き、登記簿謄本を取得します。登記簿謄本に記載している地番や面積を売買契約書に記載する必要があるため、契約書を準備する前に用意しておくといいです。
売買価格の決定
住宅の売買価格を決めます。前述の通り、みなし贈与にならないよう注意して決めていきます。不動産業者へ査定をお願いしたり、税理士等の各専門家に問い合わせるなどしてもいいでしょう。
売買契約書の作成
不動産売買契約書については、全宅連が配布する契約書をダウンロードして使用するのがおすすめです。他にもテンプレート等を検索して活用してみてください。
決済、登記簿手続き
契約書を交わしたら、代金の支払いです。基本的には銀行振込にするなど、やり取りの残るかたちで取引してください。親族間でも住宅ローンの融資を受けられた場合は、金融機関と調整してローン決済を行います。
決済を行ったら、所有権移転登記が必要です。司法書士に依頼して登記簿手続きを行ってください。
不動産業者へ依頼する必要性について
親族間で不動産売買を行う場合、売り主が決まっていることから、ご自身で手続きされる場合は不動産業者の出番はほとんどありません。
もし、親族間取引をするうえで不動産業者に依頼することがあれば、住宅ローンを組んで購入する場合や、司法書士との調整等の一切を任せたい場合です。
他にも、トラブルなく安心して取引したい場合は、親族間の取引きでも不動産業者が対応します。親族に売却するか、一般に売り出そうかどうか悩んでいる場合も、お気軽にご相談くださいね。