2023年6月7日、NHKのニュースを見ていると「『管理不全空き家』固定資産税の減額解除へ 改正法可決・成立」との一報が流れてきました。
これまでも空き家を放置して「特定空き家」に指定されると、固定資産税の減額が解除されていましたが、この法改正ではより厳しい対応が盛り込まれています。
今回は、今後の空き家対策にも影響がありそうな空き家対策特別措置法の改正と「管理不全空き家」について解説します。
改正「空き家対策特別措置法」で何が変わる?
まず、改正法のポイントについて確認していきましょう。
特定空き家になりそうな物件を「管理不全空き家」に指定する
改正法が施行されたら、このままでは特定空き家になりそうな物件、つまり、窓が割れている、草が生い茂っている等の物件を管理不全空き家に指定できるようになります。
これまでは特定空き家になり、度重なる勧告等に応じないと固定資産税の減額解除などがなされていましたが、改正法施行後は、もっと早いタイミングで固定資産税の減額解除が行われると考えられます。
現在の試算では、管理不全空き家は全国で約50万戸にものぼるとのこと。このテキストを読んでいるあなたの実家なども、もしかしたら管理不全空き家の対象になるかもしれません。
特定空き家撤去の行政権限が強くなる
これまでも空き家対策特別措置法によって、空き家に立ち入ったり、行政執行を行ったりしていましたが、改正法施行後は、さらにその行政権限が強くなります。
例えば、これまで行政代執行で空き家を撤去するまでには、多数の手順を踏まなければいけませんでした。
まずは指導から入り、それでも対応がない場合は勧告、次に命令が発出され、それでも応答がない場合には行政代執行が行われます。
しかし、物件の中には早急に撤去が必要な倒壊の危険がある物件もあります。今ではそれでも順序を踏まなければいけませんでしたが、今回の改正法案では、緊急代執行制度を創設し、より円滑に撤去できるようになりました。
地域住民からすれば、とても安心な法改正と言えそうです。
他にも、所有者が不明な物件を略式代執行できたり、緊急大執行のための費用徴収を円滑にできるようになったり、市区町村長が財産管理人の選任請求権を与えられたり、行政の権限が強くなっています。
なぜ法改正があったの?
ずばり、空き家が増え続けているからです。
空き家がここまでも増え続けているのは、固定資産税が減額され、放置しやすい状況にあるからだと言われています。
また、家を取り壊して更地にすると固定資産税がむしろ高くなるケースもあり、コストの問題から空き家の放置を選んでしまっている人も多いです。
法改正により、一般市民にはどう影響する?
特定空き家に指定される以前のタイミングで固定資産税の減額が解除されるため、売ったり貸したり、対策を取ろうという人が増えます。これまで以上に「将来的に空き家をどうするのか」と考える人が増えるでしょう。
初動が遅いと、コストが嵩む可能性も
空き家は時間が経てば売れにくくなり、修繕が必要になるなどして簡単に売却ができなくなります。ギリギリのところで動き出すと、売りたくても売れず、貸したくても貸せず、結局、解体撤去となる可能性もゼロではありません。
そうなれば、高い解体費用が必要になります。家を相続したら先送りにせずに、空き家が売れる・貸せる初期段階で対処することが大切です。
今後は行政支援等も手厚くなる?
空き家対策特別措置法の改正では、所有者への罰則的な内容ばかりが書き加えられました。しかし、専門家からは支援の重要性も叫ばれています。
一部の自治体ではすでに、空き家の解体撤去に補助金を出すなど、空き家対策を支援する動きも見られます。
神奈川県央の自治体を見ると、大和市では空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除との特例措置があったり、大和市や相模原市は危険なブロック塀の撤去費の一部を補助するなどの制度があります。
まだまだ充実しているとは言えませんが、今後、これらの制度が充実する可能性はあるかもしれません。
空き家を相続したら不動産業者にすぐ相談を
空き家対策特別措置法の改正によって、多くの人が空き家の処遇に頭を抱えることが予想できます。不動産業者を営むものとしては、とにかく「空き家を相続したら不動産業者にすぐに相談して」と言いたいです。空き家を放置してしまうと、売却も賃貸もできなくなり、解体の道しかなくなります。
親から受け継いだ空き家がある、子どもに相続させたい住宅があるなどの場合は、相続する前から準備しておき、売るのか・貸すのかなどを検討しておくのもいいでしょう。もちろん、あかり不動産にもお気軽にご相談くださいね!